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2026年08月21日

ゼロクリック時代の到来と対策 ――「AIモード」利用者の77.6%は外部サイトへ移動しない

2026年08月21日

「AIモード」を使うユーザーの約77.6%は、「AIモード」の中で得た情報だけで満足し、外部サイトへ移動しないという最新の調査結果が発表されました。この数字が示すのは、Web集客のあり方が根本的に変わりつつあるという事実です。「AIモード」で自社が引用されたとしても、そのユーザーのうち4人に3人以上は自社サイトを訪れない、という時代が既に到来しているのです。

多くの企業のマーケターや経営者にとって、この77.6%という数字は衝撃的なものです。従来のSEO対策は、検索から自社サイトへの流入を最大化することを目標としてきました。しかし、「AIモード」の普及が加速する中で、この目標そのものが達成困難になっています。従来の指標だけでこれからの集客成果を測ろうとすると、実態を大きく見誤る危険性があります。

私の実感としては、この77.6%という数字を「悲観すべき数字」として受け取るか、「新しい機会の指標」として捉えるかで、企業の戦略が全く違うものになります。ゼロクリック時代を悲観するのではなく、新しい時代の集客成果の測り方と作り方を身に付けることが、これからの企業に求められる姿勢です。

今回は、「AIモード」利用者の77.6%が外部サイトへ移動しないというゼロクリック時代の到来と、企業が取るべき対策について解説します。


77.6%という数字の意味


「AIモード」利用者の77.6%が外部サイトへ移動しないという事実の意味を、実務的に整理します。

複数の調査機関のデータによると、「AIモード」でユーザーが1つのセッションを完了する際、外部サイトのリンクをクリックする割合は約22.4%に留まっています。残りの77.6%のユーザーは、「AIモード」の要約回答だけで満足し、引用されているサイトを訪れずにセッションを終える傾向があります。

この数字は、「AIによる概要」時代のゼロクリック率(約65%)よりもさらに高い水準です。「AIモード」の回答が長く網羅的であるため、ユーザーは追加情報を求めずに済むケースが多くなっているのです。



具体的な要因として、以下があります。「AIモード」の回答は「AIによる概要」の約4倍の長さで、詳細な情報を含んでいるため追加情報を求める必要が少ない。マルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)で、疑問点は「AIモード」内で解消できる。複数の引用ソースが統合された形で提示されるため、個別のソースを訪れるインセンティブが低い。これらの要因が重なって、77.6%のユーザーが「AIモード」内で満足する状況が生まれています。

この構造は、図書館の受付で司書に丁寧に教えてもらって、それで疑問が解けたので他の書棚に行かずに帰る利用者と似ています。図書館の受付には、司書がいて利用者の質問に答えてくれるレファレンスサービスがあります。利用者が「〇〇について調べたい」と司書に相談すると、司書は関連する複数の書籍や資料を紹介しながら、質問への回答を丁寧に説明してくれます。この対応で疑問が解ければ、利用者は個々の書籍を借りずに、その情報だけで満足して図書館を後にすることがあります。

「AIモード」も、まったく同じ体験を提供しています。ユーザーは「AIモード」との対話で疑問が解消されれば、引用されているサイトを訪れる必要を感じません。この構造が、77.6%という高いゼロクリック率の背景にあるのです。


従来のSEO指標が通用しなくなる


77.6%のゼロクリック率の下では、従来のSEO指標が実態を正確に反映しなくなります。

これまでのSEOの主要指標は、オーガニックトラフィック(自然検索経由のサイト訪問者数)、検索順位、クリック率、直帰率といった、サイト訪問を前提としたものでした。しかし、「AIモード」経由の露出は、これらの指標には反映されません。「AIモード」で引用されて多くのユーザーに認知されていても、サイト訪問には結びつかないため、従来指標では「効果ゼロ」に見える現象が起きるのです。

この状況で従来指標だけを追いかけていると、以下のような判断ミスが起きやすくなります。実際は AIモードで大きな認知を獲得しているのに、オーガニックトラフィックの減少だけを見て「対策失敗」と判断してしまう。効果のある「AIモード」対策の予算を削って、効果の見えづらい従来型SEOに投資してしまう。長期的に見て重要な認知と信頼の獲得より、短期的なクリック数を追いかけてしまう。こうした判断ミスが、AI検索時代の集客戦略を歪めてしまうのです。


ゼロクリック時代の新しい成果指標


ゼロクリック時代に必要な新しい成果指標を整理します。

1.「AIモード」への引用回数
「AIモード」で自社サイトが引用される回数を、直接的な指標として追跡します。引用されているクエリ、引用の頻度、引用の質(要約の中でどう扱われているか)を継続的にモニタリングします。

2. 指名検索件数
自社名や自社ブランド名での検索件数を追跡します。「AIモード」で認知されたユーザーが、後日指名検索してくれる回数は、間接的な認知獲得の重要な指標です。

3. 業界内での言及頻度
業界メディア、専門ブログ、コミュニティ、SNSで自社が言及される頻度を追跡します。エンティティ(実在する人物や組織としての情報の集合体)としての存在感の指標になります。

4. 直接流入とダイレクトアクセス
URLの直接入力やブックマーク経由の直接流入を追跡します。ブランドを認知して意図的にアクセスするユーザーの規模を示す指標です。

5. 見込み顧客の質と量
問い合わせ・見積依頼・商談化率といった、実際のビジネス成果に近い指標を追跡します。ゼロクリックでも、実際のビジネスに繋がっているかを測ります。


「引用される」ことの価値の再定義


ゼロクリック時代においては、「引用される」ことの価値を再定義する必要があります。

従来の価値観
サイトへの流入 → コンバージョン、という直線的な価値観です。引用は「サイト訪問への入り口」として位置付けられ、訪問に繋がらない引用は価値が低いとされていました。

ゼロクリック時代の価値観
引用そのものが、認知獲得・信頼構築・エンティティの確立という独立した価値を持つ、という新しい価値観です。サイト訪問に繋がらなくても、業界内での存在感を高め、指名検索を増やし、業界メディアからの認知を広げる効果があります。

この価値観の転換ができた企業は、ゼロクリック時代でも成長を続けています。逆に、「クリックされないなら意味がない」という従来の発想に囚われた企業は、AI検索時代の機会を大きく取り逃しています。


中古着物店のクライアントの事例


先日、ある中古着物店のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「オーガニックトラフィックが減っており、SEO対策の効果が出ていないと社内で判断されている。対策を続けるべきか」と。

拝見したところ、確かに検索経由のサイト訪問数は減少していましたが、詳細に分析すると別の指標では改善が起きていました。着物関連のクエリで「AIモード」への引用が明確に増加、店舗名や店主名での指名検索が微増、業界メディアからの取材依頼が発生、といった変化です。従来指標だけを見ると「効果なし」に見えたのですが、実は「AIモード」経由の認知獲得が着実に進んでいた状況だったのです。

私は、成果指標を根本的に見直すことを提案しました。オーガニックトラフィックだけでなく、「AIモード」への引用回数、指名検索件数、業界内での言及頻度、実店舗への来店客数、といった総合的な指標セットに切り替える形です。同時に、既存の「AIモード」対策(着物の種類別・時代別・状態別の詳細解説)を継続強化しました。

半年後、総合指標の改善が明確に見え、経営層も「AIモード」対策の継続を支持する判断に変わりました。実際、地域外や海外からの来店客が明確に増加し、着物の高額商品の販売にも繋がっていきました。ゼロクリック時代の成果指標の再設計が、対策継続の判断と実際のビジネス成果に直結することを示した事例です。


ゼロクリック時代の対策設計


ゼロクリック時代の対策設計のポイントには次のようなものが考えられます。

1. 成果指標の総合化
オーガニックトラフィック単独ではなく、「AIモード」引用回数・指名検索・業界内言及・直接流入・見込み顧客の質と量を組み合わせた総合的な指標セットで成果を測ります。

2. 引用対象になるための投資
サイト訪問を増やす対策ではなく、「AIモード」の引用対象になるための情報発信に投資を集中します。深く網羅的な情報、著者エンティティの強化、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性、Googleがコンテンツの質を判断する4つの指標)シグナルの充実といった対策です。

3. サイト訪問後の体験の質を上げる
サイト訪問数は減っても、訪問してくれたユーザーへの体験を強化します。フォームの改善、詳細情報の充実、問い合わせ導線の最適化といった、1人あたりの価値を最大化する対策です。

4. 多様なブランド接点の確保
Web検索だけに依存せず、業界メディア、SNS、コミュニティ、メルマガ、ポッドキャストといった多様なブランド接点を確保します。ゼロクリック時代でも、複数の接点で顧客と繋がれる基盤を作ります。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」利用者の77.6%が外部サイトへ移動しないゼロクリック時代の到来により、従来のSEO指標だけでは実態を正確に反映できなくなっており、企業は成果指標の総合化・引用対象になるための投資・サイト訪問後の体験強化・多様なブランド接点の確保という4つの対策で新しい時代に適応する必要がある、ということです。

「引用される」ことの価値を再定義し、サイト訪問に繋がらなくても認知獲得・信頼構築・エンティティ確立という独立した価値を持つと理解できた企業だけが、ゼロクリック時代の集客成果を実現できます。悲観的に受け取るのではなく、新しい機会として捉える発想の転換が、これからの企業戦略の基盤になります。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

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一般社団法人 全日本SEO協会 代表理事

 鈴木将司

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