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「AIモード」とは何か?――Google検索の中に生まれた「もう1つのタブ」の正体

2026年08月08日

2025年から2026年にかけて、Google検索の中に「AIモード」という新しいタブが登場しました。従来の検索結果を返す通常の検索とは別に、AIとの対話形式で情報を探せる専用の場所が、Google検索の中に用意されたのです。この「AIモード」は、わずか1年で月間アクティブユーザー10億人を突破する驚異的なスピードで普及しており、企業のWeb集客戦略に無視できない影響を与え始めています。

多くの企業のWeb担当者や経営者が、「AIモード」の存在は知っているものの、その正体を正確に理解しないまま従来型のSEO対策を続けています。しかし、「AIモード」は「AIによる概要」とは根本的に異なる仕組みで動いており、対策の方向性も大きく異なります。この違いを認識せずに対策を進めると、獲得できるはずの集客成果を大きく取り逃すことになります。

長年SEOコンサルタントとして、Google検索の変化を追い続けてきた立場から言うと、「AIモード」の登場はGoogle検索の歴史における最も大きな変化の1つです。単なる新機能ではなく、検索体験そのものの再定義に近い出来事だと捉える必要があります。この認識を持って対策を組み立てられる企業と、従来型の発想のまま対応する企業では、今後の集客成果に決定的な差が生まれてくるでしょう。

今回は、「AIモード」の正体、「AIによる概要」との決定的な違い、そして企業が今から準備すべきことについて、実務の視点から解説していきます。


「AIモード」とはそもそも何か


「AIモード」とは、Google検索の中に用意された、AIとの対話形式で情報を探せる専用のタブです。従来の「すべて」「画像」「動画」「ニュース」「ショッピング」といったタブと並んで、「AI Mode」または「AIモード」と表記された新しいタブが表示され、ユーザーはこのタブをクリックすることで、AIによる会話型の検索体験に切り替えることができます。

「AIモード」の内部では、GoogleのAIモデルであるGemini 3.5 Flash(2026年5月時点の既定モデル、高速かつ推論性能が高い大規模言語モデル)が動いており、ユーザーの質問に対して長文の要約回答を生成します。単発の質問への回答だけでなく、追加の質問(「もう少し詳しく」「別のパターンは?」など)を受け付け、会話の文脈を保持したまま何度もやり取りができる、いわゆるマルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)に対応しています。



この構造は、銀行の中で、通常のATMコーナーとは別に設けられた「相談カウンター」のような、より深い相談ができる専門窓口と似ています。ATMコーナーでは、お金の預け入れや引き出しといった定型的な取引を、素早く自分で行います。一方、相談カウンターに座ると、担当者と対面で「住宅ローンの相談をしたい」「相続に関する複雑な状況を整理したい」といった、じっくり時間をかけた対話ができます。同じ銀行の店舗の中に、目的の違う2つの窓口が並列に存在しているのです。

Google検索も、まったく同じ構造です。通常の検索タブは、キーワードに関連する情報を素早く探す従来型の窓口です。「AIモード」タブは、AIとの対話でじっくり情報を集める新しい相談窓口として、同じGoogle検索の中に並列に用意されているのです。


「AIによる概要」との決定的な違い



「AIモード」と混同されやすいのが、既に多くの日本のユーザーが目にしている「AIによる概要」です。両者はどちらもGoogleのAIによる要約回答という点では共通していますが、その表示方法・使われるモデル・回答の質・ユーザー行動のすべてが根本的に異なります。

1. 表示のされ方が違う
「AIによる概要」は、通常の検索結果画面の最上部に自動的に表示されます。ユーザーが特に何もしなくても、Googleが「このクエリはAI要約が役立つ」と判断すれば表示される受動的な体験です。一方、「AIモード」は、ユーザーが自分でタブを選んで切り替えないと表示されません。能動的な選択が必要な点が根本的に違います。

2. 使われるAIモデルが違う
「AIによる概要」は、比較的軽量なAIモデルで動作しています。一方、「AIモード」はGemini 3.5 Flashという専用モデルで動いており、より深い推論と長文生成が可能です。

3. 回答の長さと深さが違う
「AIモード」の回答は「AIによる概要」の約4倍の長さがあると報告されています。単なる要約ではなく、複数の観点を含む詳細な情報レポートに近い形式で生成されます。

4. ユーザーの検索行動が違う
「AIモード」を使うユーザーは、より長く・複雑で・具体的なクエリを入力する傾向があります。単発の質問ではなく、じっくり検討したい主題を持って「AIモード」を選んでいるユーザーが中心です。


「AIモード」の会話型検索という新しい体験


「AIモード」が提供する会話型検索は、これまでのGoogle検索とは根本的に異なる体験です。

1. 1回で完結しない、複数のやり取り
ユーザーは最初の質問を入力した後、返答を見て追加の質問を投げかけます。「別のパターンは?」「その理由は?」「もう少し具体的に」といった追加質問で、情報を深掘りしていく体験です。従来の検索が「1つのクエリ→複数の検索結果」だったのに対して、「AIモード」は「対話の連続→徐々に情報が深まる」という構造になっています。

2. マルチモーダル入力の受け付け
「AIモード」は、テキストだけでなく画像・動画・音声での質問を受け付けます。マルチモーダル(テキスト・画像・動画・音声など複数の種類の情報を同時に扱えること)対応により、「この画像に写っているものを詳しく教えて」「この動画の内容に関連する情報を集めて」といった多様な形式での質問が可能です。

3. 調査エージェント的な動作
「AIモード」の裏側では、ユーザーの1つの質問に対して、AIが数十から数百の「サブクエリ(元のクエリを細分化した派生クエリ)」を自動生成し、それぞれについて並行して情報を集めます。この仕組みをクエリファンアウト(Query Fan-Out、1つのクエリから多数のサブクエリに展開する仕組み)と呼びます。「AIモード」のクエリファンアウトは、「AIによる概要」より深く広く展開されるため、より網羅的な回答が生成されます。


「AIモード」が急速に普及した背景


「AIモード」は、リリースからわずか1年で月間アクティブユーザー10億人を突破しました。この急速な普及の背景を整理します。

1. ChatGPTなどの生成AI検索への慣れ
多くのユーザーがChatGPTやGeminiといった生成AIとの対話に慣れてきており、「AIとの会話で情報を探す」体験に抵抗がなくなっています。「AIモード」は、そのユーザー体験をGoogle検索の中で提供する形として、自然に受け入れられました。

2. 通常検索での不満の蓄積
「複数のサイトを開いて情報を集めるのが面倒」「広告やSEO最適化されたページばかりで本当に欲しい情報が見つからない」といった、通常検索への不満を持つユーザーが増えていました。「AIモード」は、この不満に応える新しい選択肢として支持されています。

3. モバイル端末での使いやすさ
複数のサイトを行き来する従来の検索は、モバイル端末では特に面倒でした。「AIモード」なら、1つの画面の中で対話が完結するため、モバイルでも使いやすい体験になります。

4. Google側の積極的なプッシュ
Google自身も「AIモード」タブへの導線を検索結果画面上で分かりやすく表示し、ユーザーが選びやすい形にしています。企業として「AIモード」の普及を戦略的に進めている状況です。


「AIモード」で企業が直面する課題


「AIモード」の普及によって、企業のWeb集客には新しい課題が生じています。

1. 「AIモード」利用者の77.6%は外部サイトへ移動しない
複数の調査によると、「AIモード」を使うユーザーの約77.6%は、AIの回答を読むだけで満足し、引用されているサイトを訪れないと報告されています。従来型のSEO対策で「サイト訪問を獲得する」ことを目標としていた企業にとって、この数字は深刻です。

2. 引用対象になる条件が「AIによる概要」と異なる
「AIモード」で引用されやすいコンテンツは、長文で網羅的な深い情報を提供するページです。「AIによる概要」対策で有効だった「短く簡潔で結論先出しの情報」とは正反対の方向で最適化する必要があります。

3. 引用ソースが多様化している
「AIモード」では、通常のWebサイトだけでなく、YouTube動画(全引用の約20%)、Reddit(「AIによる概要」の3.5倍引用される)、LinkedIn記事などが積極的に引用されます。テキスト記事だけの発信戦略では十分ではなくなりつつあります。

4つ目:BtoB企業の情報が優先される傾向
「AIモード」では、BtoB向けの詳細な専門情報が高く評価される傾向があります。BtoC向けの浅い情報は選ばれにくく、深い専門情報を持つ企業が有利になっています。


「AIモード」対策の成功事例


先日、ある楽器店のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「若い顧客層がGoogleの通常検索より『AIモード』で楽器選びの相談をするようになり、自社の情報が全く反映されない」と。

拝見したところ、店舗としては熟練の楽器選定のノウハウを持っていましたが、Webサイトの記事が「〇〇ギター おすすめ5選」といった短い記事中心でした。「AIモード」で引用されやすい「長文で網羅的な情報」という条件を満たしていない状態だったのです。ユーザーは「初心者から中級者への移行時期にどの楽器を選ぶべきか」「予算10万円で本格的な演奏を目指すなら何を優先するか」といった、じっくりした相談を「AIモード」で行っていました。

私は、店主の楽器選定に関する深い知見を、網羅的な長文記事として整備することを提案しました。楽器の種類別・予算別・演奏スタイル別・演奏歴別の選び方を、それぞれ数千字規模の深い解説として整理する形です。同時に、店主が実際に楽器選定の相談に応じている動画をYouTubeで公開し、字幕を丁寧に整えました。

4か月後、楽器選びの相談的なクエリで「AIモード」への引用が発生し、そこからの遠方からの来店客が明確に増加しました。「AIモード」対策では、深く網羅的な情報が武器になることを実感できた事例です。


企業が今から準備すべき対策


「AIモード」時代に向けて、企業が今から準備すべき対策を整理します。

1. 網羅的な長文コンテンツの整備
「AIによる概要」対策で有効だった「短く簡潔なコンテンツ」ではなく、深く網羅的な長文コンテンツを、主要テーマごとに整備します。「ピラーページ」(特定テーマの網羅的な柱コンテンツ)としての設計が有効です。

2. 著者エンティティの強化
「AIモード」では、著者の権威性がより厳しく評価されます。実名・経歴・実績・所属団体・外部プロフィールとの紐付けなど、著者のエンティティ(実在する人物や組織としての情報の集合体)確立を最優先で進めます。

3. マルチモーダル発信の開始
YouTubeでの動画発信、LinkedInでの記事投稿、Redditコミュニティでの継続的な発信など、テキスト記事以外のチャネルでの情報発信を体系化します。「AIモード」の引用ソースは多様化しているため、複数チャネルでの露出が必要です。

4. BtoB向けの深い専門情報の発信
BtoB企業でなくても、「BtoB担当者が読む水準の深い専門情報」を発信することで、「AIモード」からの評価が上がります。一般向けの浅い情報より、専門的で深い情報の方が「AIモード」時代には有利になります。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」はGoogle検索の中に用意された会話型検索の専用タブであり、「AIによる概要」とは根本的に異なる仕組み・体験・対策方針を持ち、1年で月間10億ユーザーを突破する急速な普及の中で、企業のWeb集客戦略に大きな影響を与える存在になっている、ということです。

「AIによる概要」との違いを理解した上で、網羅的な長文コンテンツの整備・著者エンティティの強化・マルチモーダル発信の開始・BtoB水準の深い専門情報の発信という4つの準備を今から進めることで、「AIモード」時代への適応が可能になります。「AIモード」を単なる新機能ではなく、Google検索の本質的な変化として捉える発想が、これからの企業戦略の核になります。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。
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一般社団法人 全日本SEO協会 代表理事

 鈴木将司

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