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2025年12月13日

AI時代に必要なスキル――増やすべきもの、手放すべきもの

2025年12月13日

生成AIの普及によって、「これからはどんなスキルを身につければいいのか」「今まで積み上げてきた努力は無駄になってしまうのではないか」と、不安を感じる人が急激に増えています。私自身、コンサルティングやスクールの授業を通じて、企業の経営者、Web担当者、フリーランス、そしてこれからのキャリアに悩む個人の方々から、同じような相談を何度も受けてきました。

しかし、実際に現場を見ていると、AIによって「価値がなくなるスキル」と「むしろ重要性が増すスキル」は、すでに明確に分かれ始めています。求められているのは、AIに仕事を奪われないための特別な才能ではなく、AIを前提に、どう考え、どう使い、どう成果につなげるかという力です。

今回は、不安をあおるための話ではなく、これからの時代において本当に身につけておくべきスキルとは何かを、現場での相談事例や実務の視点を交えながら整理していきます。


AIによって価値が変わるスキル


「できること」そのものが、スキルではなくなりつつあるAI時代を理解するうえで、最初に押さえておきたいのは、「できること」そのものがスキルとして評価されにくくなっているという現実です。

文章が書ける、資料が作れる、データを整理できる。これらは、ほんの数年前までは十分に価値のあるスキルでした。2022年11月にChatGPTが登場する前は、ブログ記事を一定の品質で書ける人は限られており、それだけで専門性として評価されました。しかし現在では、AIを使えば誰でも一定水準のアウトプットを短時間で出せます。これは能力が落ちたのではなく、その能力が希少ではなくなったという構造変化です。


「作業スキル」に依存してきた人ほど不安が大きい


AI時代に強い不安を感じやすいのは、自分の価値を「作業スキル」に置いてきた人です。決められた手順で記事を書く、指示通りに資料を作る、過去の成功パターンをなぞる。これらは、AIが非常に得意とする領域です。

実際に私は、「AIが出てきてから、自分の強みが分からなくなった」という声を聞くようになりました。詳しく話を聞くと、その多くが「手を動かすこと」自体で評価されてきたケースです。ここで重要なのは、作業スキルが不要になったのではなく、作業「だけ」では評価されなくなったという点です。

これは、カーナビが普及した後のドライバーの価値に似ています。目的地までのルートを正確に覚えていること自体は、かつては立派なスキルでした。しかし今は、ナビが最短ルートや渋滞回避まで瞬時に示してくれます。だからといって、ドライバーが不要になったわけではありません。



求められているのは、「どの道を走るかを覚えている人」ではなく、「この状況なら高速を使うべきか」「今日はあえて遠回りすべきか」と判断できる人です。同じように、AI時代の仕事でも、手順をなぞる力そのものより、状況を見て選び直す力が価値になります。

作業スキルに不安を感じるのは自然なことですが、それは能力が失われたからではありません。これまで「手を動かしてきた経験」を、判断に活かす段階へ移る時期に来ているだけなのです。


AI操作スキルは、差別化ではなく前提条件でしかない


「AI時代に必要なのは、AIを使いこなすスキルだ」と言われることがあります。確かに、AIを使えない状態では、仕事のスピードや効率で差がついてしまいます。

ただ、私がAIOやSEOの現場で感じているのは、AI操作スキルそのものは、すでに「差別化要因」ではなくなりつつあるということです。実務では、「AIを使えるかどうか」よりも、「AIをどう使って、どんな判断をしているか」が問われています。AI操作は前提条件であり、評価はその先で決まります。

これは、パソコンやExcelが普及した後の職場とよく似ています。かつては「Excelが使える」というだけで評価される時代がありましたが、今ではそれは特別な強みではありません。多くの人が使えるからこそ、「Excelで何を分析し、どんな判断につなげたのか」が評価されます。



AI操作スキルも同じです。「使えるかどうか」はスタートラインであって、評価されるのはその先です。同じAIを使っていても、成果に差が出るのは、「どんな指示を出したか」ではなく、「その結果をどう読み取り、どう判断したか」に違いがあるからです。AI時代に価値を生むのは、ツールを動かす手ではなく、ツールの出力を引き受ける頭と責任なのです。


AI時代にスキルをどう捉え直すべきか


ここまでを整理すると、AI時代に起きているのは「スキルの消失」ではなく、「スキルの再定義」です。作業能力よりも、その作業を使って「何を考え、何を決めたのか」が重視されるようになっています。

私自身、長年SEOやWebマーケティングに携わってきましたが、評価され続けている人ほど、「手を動かす人」から「判断を引き受ける人」へと役割を移しています。強調したいのは、AI時代に必要なスキルは、ゼロから作り直すものではないという点です。

これまでの経験も、使い方を変えれば十分に価値を持ち続けます。最も価値が高まるのは「判断する力」です。AI時代に最も重要になるスキルは何かと聞かれたら、私は迷わず「判断する力」だと答えるでしょう。



AIは複数の選択肢を提示することはできますが、「どれを選ぶべきか」「どれを捨てるべきか」を決めることはできません。AIOやSEOの相談でも、AIが出した案をそのまま採用する人と、「この会社には合わない」「今はやらない」と切り分けられる人とでは、結果に大きな差が出ます。AI時代の仕事は、答えを出す仕事から、選択する仕事へと変わっています。


「なぜそうするのか」を説明できる力


AI時代に見落とされがちですが、非常に重要なのが「説明する力」です。AIが出した答えを使うにしても、「なぜこの判断をしたのか」「なぜ別の案ではなくこちらを選んだのか」を、自分の言葉で説明できるかどうかが問われます。



専門性とは、知識の量ではなく、判断の理由を語れることです。私自身、講座や記事では必ず「なぜ私はそう考えるのか」を言語化するようにしています。ここは、AIには代替できない領域です。仕事柄、私は「何故そうなのか?」ということをいつも考えてしまいます。

そして答えが出てきたとしても、さらに、「それは何故のか?」と自分に問います。そして根本的な答えが出てきた時にやっと理由、原因を問うことを止めます。そうしたことを繰り返すうちに、クライアントやスクール生、会員さんたちにAIOやSEOの質問を問われた時にほとんどの場合即答できるようになりました。

この人が持つ「好奇心」は、恐らくどのAIも未だそれほどは持っていないと考えます。そうだとしたら、この部分が人間がAIに対してアドバンテージを持っている数少ない資質なのではないでしょうか。


AIと役割分担できる設計力


AI時代に強い人は、「AIに何を任せるか」「自分は何を引き受けるか」を意識的に設計しています。下書きや整理はAIに任せる。最終判断、責任、対外的な説明は自分が担う。

この役割分担が明確な人ほど、AIを脅威ではなく、能力を拡張する道具として使えています。これは特別な才能ではありません。仕事の設計の仕方の問題です。

これは、部下や外注スタッフと仕事を進めるときの感覚に近いものです。すべてを自分でやろうとする人ほど忙しくなり、成果も頭打ちになります。一方で、作業や下準備は任せつつ、「方向性を決める」「最終的な責任を負う」という役割を自分が引き受けている人ほど、全体をうまく回せています。



AIも同じです。AIを「全部やってくれる存在」と考えると不安になりますが、「任せられる部下」として捉えると、使い方は一気に変わります。下書きや整理、選択肢の提示はAIに任せる。最終的にどれを選び、どう伝え、結果に責任を持つかは自分が担う。AIと役割分担できる設計力とは、仕事を奪われないための防御ではなく、自分が本来やるべき仕事に集中するための戦略なのです。


最後に必要なのは「変化を前提に考え続ける姿勢」


AI時代には、「これさえ身につければ安心」というスキルは存在しません。だからこそ、特定のスキル以上に重要なのが、「変化を前提に考え続ける姿勢」です。

私自身、Webマーティングという分野で20年以上活動してきましたが、検索エンジンも手法も何度も変わってきました。そのたびに生き残ってきた人に共通しているのは、「学び続け、考え続ける姿勢」でした。

AI時代に必要なスキルとは、最新ツールを追いかけることではありません。AIに任せるべき作業を見極め、自分が引き受ける判断と責任を明確にすることです。AIは仕事を奪う存在ではなく、仕事の形を変える存在です。その変化を恐れるのではなく、主体的に使いこなす視点を持つことで、AI時代でも価値を発揮し続けることができます。


まとめ


AI時代に必要なスキルとは、特別な才能や最新ツールを誰よりも早く使いこなすことではありません。求められているのは、「作業ができること」から一歩進んで、判断できること・説明できること・仕事全体を設計できることです。

これまで積み上げてきた経験やスキルが、無意味になるわけではありません。むしろ、それらはAIをどう使うかを決めるための判断材料として、以前よりも重要な価値を持ち始めています。AIがどれだけ進化しても、「何を選び、何を捨てるか」「なぜその判断をしたのか」を引き受けるのは人間です。

AIは仕事を奪う存在ではなく、仕事の形を変える存在です。その変化を恐れるのではなく、AIに任せる部分と、自分が担う部分を意識的に分けて考えることで、人はより本質的な役割に集中できるようになります。

変化が激しい時代だからこそ、「考え続ける力」「問い続ける姿勢」を持つ人は、これからも価値を発揮し続けます。AI時代とは、不安の時代であると同時に、自分の役割を再定義できるチャンスの時代でもあります。これまでの経験を土台に、判断と責任を引き受ける立場へ一歩踏み出すことで、AI時代でも十分に戦っていけるはずです。
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一般社団法人 全日本SEO協会 代表理事

 鈴木将司

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