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なぜ「AIモード」の月間アクティブユーザーは1年で10億人を突破したのか?――Google最速の普及スピードを解説

2026年08月16日

Googleが「AIモード」をリリースしてから1年で、月間アクティブユーザーが10億人を突破しました。この普及スピードは、Googleが提供してきた他の主要サービス、そしてスマートフォンアプリ全体の中でも極めて異例の速さです。単なる「新機能の追加」ではなく、「情報アクセスの根本的な選択肢の変化」として、世界中のユーザーに受け入れられたことを示しています。

多くの企業のWeb担当者や経営者が、この普及スピードの意味を過小評価しています。「まだ日本では大きな影響が見えない」「まだ多くのユーザーは通常検索を使っている」といった認識で、対応を先送りしている企業も少なくありません。しかし、10億ユーザーという数字は、既にGoogleの主要な検索体験の1つとして「AIモード」が定着していることを示しており、この事実を無視して従来型の対策を続けるのは戦略的に危険です。

長年SEOコンサルタントとして、Google検索の変化を追い続けてきた立場から言うと、この10億ユーザー突破という数字は、企業のWeb集客戦略における「今すぐの対応」を促す強力なシグナルです。無視することはできません。急速な普及の背景となる要因を正しく理解することで、単なる流行ではなく構造的な変化として「AIモード」を捉えられるようになり、対策の優先順位付けが明確になります。

今回は、「AIモード」の月間アクティブユーザーが1年で10億人を突破した背景と、その急速な普及が企業に与える意味について解説します。


「AIモード」1年で10億ユーザーという数字の意味


10億人という数字は、単純に多い少ないの話ではありません。世界のインターネットユーザーの約5分の1に相当する規模で、これはFacebook・YouTube・WhatsAppといった巨大サービスと肩を並べる水準です。しかも、既存の巨大サービスが10億ユーザーに到達するまでには通常5〜10年の時間を要してきましたが、「AIモード」はわずか1年でそこに到達しました。

この普及の速さは、以下のような構造的な意味を持ちます。まず、「AIモード」は単なる目新しい機能ではなく、既に世界規模で日常的に使われるサービスになっているという事実です。次に、ユーザー体験の変化が、想定以上に速いペースで進行しているということです。企業側の対応が数年遅れれば、その間に大量のユーザー行動の変化が既に定着してしまっている可能性があります。

日本国内でも、「AIモード」の月間アクティブユーザーは既に数千万人規模と推定されており、この数字も急速に増加しています。「まだ日本では影響が薄い」という認識は、既に現実と乖離し始めているのです。


他のGoogleサービスと比較した普及スピード




この現象は、スマホが登場して数年で従来型携帯電話を置き換えた急速な普及と似ています。スマホが登場した2007年以降、それまで10年以上にわたって主流だった従来型携帯電話は、わずか数年で市場から姿を消しました。ユーザーが「新しい選択肢」に触れて「これは今までのものより明らかに使いやすい」と感じた瞬間、切り替えは急速に進んだのです。

「AIモード」の普及も、これと同じ構造で急速に進んでいます。過去のGoogle主要サービスの普及スピードを比較すると、以下のような傾向が見えてきます。

Googleマップ:リリース(2005年)から月間アクティブユーザー10億人到達までに約8年を要しました。

Googleフォト:リリース(2015年)から10億人到達までに約4年を要しました。

Googleアシスタント:リリース(2016年)から5億人到達までに約3年、10億人到達には約5年を要しました。

「AIモード」:リリース(2025年)から10億人到達までにわずか1年でした。

この比較から分かるのは、「AIモード」がGoogleの歴史上最速で10億ユーザーに到達したサービスであるということです。ユーザー側の受け入れ準備が既に整っていた状態でリリースされたため、爆発的な普及が可能になったのです。


急速普及の要因1:生成AI検索への慣れの土台


「AIモード」急速普及の第1の要因は、生成AI検索への慣れという土台が既に形成されていたことです。

2022年11月のChatGPTリリース以降、世界中のユーザーが「AIとの対話で情報を得る」体験に触れてきました。ChatGPTだけで月間アクティブユーザーは数億人規模に達し、「AI に質問して回答をもらう」という行動パターンが、日常的なものとして定着しました。

この経験を持ったユーザーにとって、「AIモード」の登場は「新しい体験」ではなく「Google検索の中でも同じことができるようになった」という自然な受け止めでした。使い方を学ぶハードルはほぼゼロで、既に慣れた行動をGoogle検索の中で行えるようになっただけ、という認識だったのです。

これは、他の技術革新でよく見られる「先行サービスがユーザーを教育し、後発サービスがその果実を刈り取る」構造の典型例です。ChatGPTが3年かけて世界のユーザーを対話型AIに慣れさせ、その土壌の上に「AIモード」が投入されたことで、爆発的な普及が可能になったのです。


急速普及の要因2:通常検索への不満の蓄積




第2の要因は、通常のGoogle検索に対するユーザーの不満が蓄積していたことです。

近年のGoogle検索は、以下のようなユーザー不満が広がっていました。SEOで最適化されすぎたページばかりが上位に並び、本当に欲しい情報が見つからない。広告表示が増えすぎて、オーガニックの検索結果に辿り着くのに時間がかかる。複数のサイトを開いて情報を集めるのが面倒。同じような内容の記事が多く、独自の視点や深い情報が見つけにくい。といった不満です。

「AIモード」は、この不満に対する解答として登場しました。1つの画面の中で情報を集められる、複数のソースから統合された回答が得られる、追加質問で情報を深掘りできる、といった体験は、通常検索の不満を根本的に解消する可能性を持っています。

不満を抱えたユーザーが、その不満を解消してくれる新しい選択肢に出会えば、切り替えは急速に進みます。この心理的な地ならしが、「AIモード」の急速普及の重要な要因になっていました。


急速普及の要因3:モバイル環境との親和性




第3の要因は、モバイル環境との高い親和性です。

現代のGoogle検索利用の大半は、スマートフォンからのアクセスです。スマホの小さな画面で複数のサイトを行き来する従来の検索体験は、多くのユーザーにとって使いにくい体験でした。「AIモード」は、1つの画面の中で対話が完結するため、モバイル環境で特に使いやすい体験を提供します。

音声入力による質問、画像を撮影しての質問、動画を送っての質問といったマルチモーダル入力(テキスト・画像・動画・音声など複数の種類の情報を同時に扱えること)も、モバイル環境との相性が良い要素です。スマホの機能を最大限活用できる形での検索体験が、「AIモード」で実現されているのです。

また、通勤中・移動中・スキマ時間といったモバイル利用の場面では、じっくり複数サイトを比較する余裕がないことが多くあります。「AIモード」なら短時間で必要な情報を集められるため、モバイル利用の場面で特に選ばれやすくなっています。


急速普及の要因4:Google側の戦略的なプッシュ


第4の要因は、Google自身が「AIモード」の普及を戦略的に推進していることです。

Googleは、検索結果画面上で「AIモード」タブへの導線を分かりやすく表示し、ユーザーが選びやすい形にしています。多くのユーザーが「AIモード」の存在を認識し、簡単に試せる状態を作っています。

さらに、Googleは「AIモード」の機能を継続的に強化しています。マルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)、マルチモーダル入力、Deep Search機能、Search Liveといった新機能が、次々と「AIモード」に追加されており、ユーザー体験の魅力が継続的に高まっています。

Google が「AIモード」を検索の未来として明確に位置付けているため、この普及は一時的なブームで終わることなく、構造的な変化として定着していく見通しです。


この普及が企業に与える意味


「AIモード」の急速普及が、企業のWeb集客戦略に与える意味には次のようなものが考えられます。

1. 従来型SEOだけでは十分ではない時代
10億ユーザーが「AIモード」を使っている状況では、通常検索の結果ページで上位表示することだけを目指す従来型SEOでは、集客の機会を大きく取り逃します。「AIモード」への対策を並行して進める必要があります。

2. 対策開始の遅れが取り戻せなくなる
急速な普及は、ユーザー行動の急速な変化を意味します。競合企業が既に「AIモード」対策を進めている中で、対応を遅らせるほど差が広がっていきます。

3. マルチモーダル発信の重要性
「AIモード」ではテキストだけでなく、動画・音声・画像といった多様な形式の情報が引用対象になります。これらのモダリティでの発信も、企業のコンテンツ戦略の一部として位置付ける必要があります。


タクシー会社での「AIモード」対応事例


先日、あるタクシー会社のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「配車予約サイトからの流入が減っており、原因を調べたら『AIモード』での相談で他社が引用されていた」と。

拝見したところ、確かにタクシー配車に関するクエリで「AIモード」の引用ソースを確認すると、大手配車アプリの情報が主に引用されていました。この会社の情報は、通常検索では上位に来ていたものの、「AIモード」での引用対象からは外れていたのです。

私は、「AIモード」で引用されやすい情報構造への転換を提案しました。地域内のタクシー利用シーン別(通勤・観光・空港送迎・介護)の詳細ガイド、料金体系の透明な解説、実際の利用者の声、車両の種類と特徴の詳しい紹介といった、深く網羅的な情報を体系化する形です。同時に、YouTubeでの車両紹介動画や乗務員インタビュー動画も並行して発信しました。

3か月後、「〇〇市 タクシー」といった地域系クエリの「AIモード」で自社の情報が引用されるようになり、そこから配車予約が増加しました。この事例は、急速に普及した「AIモード」への迅速な対応が、直接的な集客成果に繋がることを示した事例です。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」の月間アクティブユーザーが1年で10億人を突破した背景には、生成AI検索への慣れの土台・通常検索への不満の蓄積・モバイル環境との親和性・Google側の戦略的プッシュという4つの要因があり、この急速な普及は企業のWeb集客戦略に「今すぐの対応」を求める強力なシグナルになっている、ということです。

Googleの主要サービスの歴史上最速で10億ユーザーに到達した事実は、「AIモード」が一時的なブームではなく構造的な変化として定着していく見通しを示しています。従来型SEOだけでは不十分な時代、対策開始の遅れが取り戻せなくなる状況、マルチモーダル発信の重要性という3つの意味を認識し、迅速な対応を進めることが企業の集客成果に直結します。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

「AIによる概要」ばかり見るようになった自分に驚いた・・・精度向上とローカル検索への浸透が変えたもの

2026年08月09日

最近、私自身の検索行動が明らかに変わってきました。

Googleで何かを調べたとき、検索結果ページの一番上に表示される「AIによる概要」の内容が、以前よりもはっきりと正確になっていると感じるのです。少し前までは「一応読むけれど、結局は下の検索結果をクリックして確かめる」というのが私の使い方でした。ところが今は、「AIによる概要」を読んだ時点で疑問が解消してしまうことが増えています。

さらに驚いたのは、自分の中に生まれた感情のほうです。「AIによる概要」に求めていた答えが書かれていたとき、私は「良かった、これで分かった。検索結果のリンクをクリックしなくて済むから時間が節約できる」と喜んでいました。

Webサイトのアクセスを増やすことを20年以上仕事にしてきた人間が、リンクをクリックせずに済んだことを喜んでいる。この自己矛盾に気づいたとき、これは記事にすべき変化だと思いました。

今回は、私が体験したこの変化が、海外の調査データでどう裏付けられているのかを整理していきます。


「AIによる概要」の正答率は85%から91%に上がっていた


まず、「精度が上がった気がする」という私の実感は、気のせいではありませんでした。

ニューヨーク・タイムズがAIスタートアップのOumiと共同で行った分析によると、「AIによる概要」が事実確認用のテストに正しく答えられた割合は、2025年10月時点の85%から、2026年2月には91%へと上昇していました。わずか4か月で6ポイントの改善です。

この背景には、「AIによる概要」を動かしているAIモデルが、Gemini 2からGemini 3へと世代交代したことがあります。土台になっているエンジンが入れ替わったのですから、答えの質が変わるのは当然といえば当然です。

ただし、この調査には見逃せない指摘も含まれています。正解した回答のうち、出典として示されたページの内容では裏づけられないものの割合が、37%から56%へと悪化していたのです。

これは「グラウンディング」(AIが自分の学習した知識だけで答えるのではなく、検索して見つけてきた実在の情報に基づいて答える仕組み)が弱まっていることを意味します。つまり「答えは合っているのに、なぜその答えになったのかを示す根拠のほうがずれている」という状態が増えているわけです。

料理にたとえるなら、出てきた料理はおいしいのに、添えられたレシピに書かれた材料と実際に使われた材料が食い違っているようなものです。食べる分には困りませんが、同じ味を再現しようとすると途端に困ります。

なお、Googleはこの分析について、使われたテストに欠陥があり、実際にユーザーが行う検索を反映していないと反論しています。数字の受け止め方には少し幅を持たせておくのがよいと思います。


なぜ「AIモード」ではなく「AIによる概要」を選んでしまうのか



もう一つ自分でも意外だったのが、私が「AIモード」をほとんど使っていないという事実です。

Googleは対話しながら検索できる「AIモード」を大きく打ち出しています。それにもかかわらず、私は検索結果ページに自動的に出てくる「AIによる概要」ばかり見ている。この違いは何なのでしょうか。

説明してくれるデータがあります。2026年4月に実施された、高額な買い物185件を対象にしたユーザー行動調査です。

この調査では、「AIモード」で行われたタスクのうち88%で、ユーザーはAIが提示した候補リストをそのまま受け入れていました。74%が一番上に挙げられた選択肢を選び、64%は何もクリックせずに終えています。

一方、「AIによる概要」では、ユーザーはAIの答えを読みながらも、その下に並ぶ検索結果を見比べて評価を続ける傾向が確認されました。

つまり「AIモード」は全部おまかせ、「AIによる概要」は参考意見を聞きつつ自分でも確かめる、という使い分けが自然に起きているわけです。旅行にたとえるなら、「AIモード」はツアーガイドに完全についていく旅、「AIによる概要」は現地の人におすすめを聞いてから自分の足で歩く旅、というイメージで捉えてください。

私が「AIによる概要」を選んでしまうのは、無意識のうちに「自分で確かめる余地」を残しておきたいからだと気づきました。そして皮肉なことに、精度が上がるほど、その確かめる工程のほうを省くようになっていきます。


ローカル検索の68%に「AIによる概要」が出ている


私の依存度をさらに高めたのが、ローカル検索(地域名やお店を含む検索)での変化です。

少し前まで、ローカル検索といえば地図とお店が3件並ぶ「ローカルパック」が主役でした。ところが最近は、その上に「AIによる概要」が当たり前のように表示されます。


米国のローカルSEO専門企業Whitesparkの調査では、ローカル検索の68%に「AIによる概要」が出現していたのに対し、ローカルパックの出現は39%にとどまりました。

検索の意図別に見ると差はさらに歴然としています。「タコス サンフランシスコ」のように単純にお店を探す検索では15%程度でしたが、「近くの眼科検診はどれくらい時間がかかる?」といった情報を知りたい検索では92%、両方の要素が混ざった検索では97%に達していました。

ここで重要なのは、ローカルパックと「AIによる概要」では、選ばれ方の仕組みがまったく違うという点です。ローカルパックはGoogleビジネスプロフィールの登録情報から3件を引っ張ってきます。それに対して「AIによる概要」は、まず答えの文章を組み立てて、そのあとにどのサイトを出典として示すかを決めています。


そのため、ローカルパックでは上位に出ているのに、同じキーワードの「AIによる概要」ではまったく触れられない、という事業者が実際に出てきています。地域ビジネスにとって、これは無視できない変化です。


「クリックしなくて済んだ」と喜ぶ自分に驚いた話


そして冒頭に書いた、あの感情です。

こうした行動は「ゼロクリック」(検索した人がどのサイトにも移動せず、検索結果ページだけで用事を済ませてしまうこと)と呼ばれます。

米国の調査機関Pew Research Centerは、900人の成人が実際にどうブラウザを操作したかを追跡しました。その結果、「AIによる概要」が表示された検索で下の検索結果をクリックした人は8%にとどまり、表示されなかった場合の15%のほぼ半分でした。「AIによる概要」の中に置かれた出典リンクをクリックした人は、わずか1%です。

さらに象徴的なのが、「AIによる概要」を見たあとにそこで検索をやめてしまった人が26%いたという数字です。表示されなかった場合は16%でした。

この10ポイントの差こそ、まさに私が感じた「良かった、これで分かった」という満足感の正体だと思っています。ユーザーは競合サイトに流れたのではありません。行く必要そのものがなくなったのです。


日本のユーザーはまだ「AIによる概要」を素通りしている


ところが、ここで面白いデータがあります。

アウンコンサルティングが2026年7月に発表した、日本・アメリカ・ドイツ・インド・シンガポールの5か国を対象とした調査です。この調査で日本の回答者の最多回答は「AIによる概要は読まずに、下部の自然検索結果からウェブサイトにアクセスする」で36.7%。しかもこれは5か国中で最も高い数値でした。

つまり日本の平均的なユーザーは、今のところ私とは正反対の行動をとっているわけです。

ただ、私はこれを「日本はまだ大丈夫」という材料だとは考えていません。むしろ逆です。

日本のユーザーが「AIによる概要」を素通りしているのは、まだ内容を信用しきれていないからでしょう。しかし、その精度は先ほど見たとおり着実に上がり続けています。信用できると多くの人が感じた瞬間に、日本でも一気に私と同じ行動が広がります。

言い換えれば、今の日本は猶予期間の中にいます。この期間のうちに手を打てるかどうかで、数年後のアクセス数は大きく変わってきます。


あるリフォーム会社のクライアントさんに起きた変化


先日、あるリフォーム会社のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「地域名を入れたキーワードでの検索順位は下がっていないのに、問い合わせだけが減っている」と。

Googleサーチコンソールを拝見すると、表示回数はむしろ増えていて、クリック率だけが落ちていました。実際に検索してみると、上部に「AIによる概要」が出ており、そこには近隣の別会社のサイトが出典として並んでいたのです。

私は「順位を上げる作業ではなく、AIに引用してもらう作業に切り替えましょう」とお伝えしました。具体的には、施工費用の目安、工期、よくある質問への回答を、それぞれ独立した見出しと段落で書き直していただきました。1つの段落だけを抜き出して読んでも意味が通じる形にするのがポイントです。

数か月後、「AIによる概要」にそのクライアントさんのページが出典として表示されるようになり、問い合わせ数も戻ってきました。順位を追いかけていただけでは、この結果にはたどり着けなかったと思います。


これからのSEOで優先すべき3つのこと


ここまでの流れを踏まえて、今すぐ取り組むべきことを3つに整理します。

1:抜き出されやすい段落の書き方に変える
「AIによる概要」は、ページ全体ではなく特定の段落を単位として抜き出しています。そのため、前の文脈を読まないと意味が通じない書き方は不利になります。1つの段落だけを読んでも答えとして成立する形に整えてください。

2:情報を知りたい検索に答えるページを増やす
先ほどのデータのとおり、「AIによる概要」は情報を知りたい検索で圧倒的に多く出ます。「費用はいくらか」「期間はどれくらいか」「何が違うのか」といった疑問に正面から答えるページを持っている会社ほど、引用される機会が増えていきます。

3:誰が書いたのかを明示する
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性という、Googleがコンテンツを評価するときに重視する4つの観点)を示すことは、AIに引用される確率にも直結します。著者名、経歴、保有資格、実績を必ず明記してください。名前のない情報は、AIにとっても信用しづらいものです。


まとめ


「AIによる概要」の正答率は85%から91%へ上がり、ローカル検索の68%にまで浸透し、その結果として利用者はリンクをクリックしなくなっています。そして私自身が、クリックせずに済んだことを喜ぶ側に回っていました。

日本のユーザーはまだ「AIによる概要」を素通りする傾向が5か国中で最も強く、その意味で日本の企業には準備の時間が残されています。しかし、それが長く続く猶予でないことは、精度の向上ペースを見れば明らかです。

やるべきことは、順位を上げる努力から、AIに引用される努力へと軸足を移すことです。段落単位で意味が完結する文章を書き、読者の疑問に正面から答え、誰が書いたのかを明示する。どれも地味な作業ですが、これが最も確実な道です。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

「AIモード」とは何か?――Google検索の中に生まれた「もう1つのタブ」の正体

2026年08月08日

2025年から2026年にかけて、Google検索の中に「AIモード」という新しいタブが登場しました。従来の検索結果を返す通常の検索とは別に、AIとの対話形式で情報を探せる専用の場所が、Google検索の中に用意されたのです。この「AIモード」は、わずか1年で月間アクティブユーザー10億人を突破する驚異的なスピードで普及しており、企業のWeb集客戦略に無視できない影響を与え始めています。

多くの企業のWeb担当者や経営者が、「AIモード」の存在は知っているものの、その正体を正確に理解しないまま従来型のSEO対策を続けています。しかし、「AIモード」は「AIによる概要」とは根本的に異なる仕組みで動いており、対策の方向性も大きく異なります。この違いを認識せずに対策を進めると、獲得できるはずの集客成果を大きく取り逃すことになります。

長年SEOコンサルタントとして、Google検索の変化を追い続けてきた立場から言うと、「AIモード」の登場はGoogle検索の歴史における最も大きな変化の1つです。単なる新機能ではなく、検索体験そのものの再定義に近い出来事だと捉える必要があります。この認識を持って対策を組み立てられる企業と、従来型の発想のまま対応する企業では、今後の集客成果に決定的な差が生まれてくるでしょう。

今回は、「AIモード」の正体、「AIによる概要」との決定的な違い、そして企業が今から準備すべきことについて、実務の視点から解説していきます。


「AIモード」とはそもそも何か


「AIモード」とは、Google検索の中に用意された、AIとの対話形式で情報を探せる専用のタブです。従来の「すべて」「画像」「動画」「ニュース」「ショッピング」といったタブと並んで、「AI Mode」または「AIモード」と表記された新しいタブが表示され、ユーザーはこのタブをクリックすることで、AIによる会話型の検索体験に切り替えることができます。

「AIモード」の内部では、GoogleのAIモデルであるGemini 3.5 Flash(2026年5月時点の既定モデル、高速かつ推論性能が高い大規模言語モデル)が動いており、ユーザーの質問に対して長文の要約回答を生成します。単発の質問への回答だけでなく、追加の質問(「もう少し詳しく」「別のパターンは?」など)を受け付け、会話の文脈を保持したまま何度もやり取りができる、いわゆるマルチターン検索(複数回の対話を1つのセッションとして扱う検索方式)に対応しています。



この構造は、銀行の中で、通常のATMコーナーとは別に設けられた「相談カウンター」のような、より深い相談ができる専門窓口と似ています。ATMコーナーでは、お金の預け入れや引き出しといった定型的な取引を、素早く自分で行います。一方、相談カウンターに座ると、担当者と対面で「住宅ローンの相談をしたい」「相続に関する複雑な状況を整理したい」といった、じっくり時間をかけた対話ができます。同じ銀行の店舗の中に、目的の違う2つの窓口が並列に存在しているのです。

Google検索も、まったく同じ構造です。通常の検索タブは、キーワードに関連する情報を素早く探す従来型の窓口です。「AIモード」タブは、AIとの対話でじっくり情報を集める新しい相談窓口として、同じGoogle検索の中に並列に用意されているのです。


「AIによる概要」との決定的な違い



「AIモード」と混同されやすいのが、既に多くの日本のユーザーが目にしている「AIによる概要」です。両者はどちらもGoogleのAIによる要約回答という点では共通していますが、その表示方法・使われるモデル・回答の質・ユーザー行動のすべてが根本的に異なります。

1. 表示のされ方が違う
「AIによる概要」は、通常の検索結果画面の最上部に自動的に表示されます。ユーザーが特に何もしなくても、Googleが「このクエリはAI要約が役立つ」と判断すれば表示される受動的な体験です。一方、「AIモード」は、ユーザーが自分でタブを選んで切り替えないと表示されません。能動的な選択が必要な点が根本的に違います。

2. 使われるAIモデルが違う
「AIによる概要」は、比較的軽量なAIモデルで動作しています。一方、「AIモード」はGemini 3.5 Flashという専用モデルで動いており、より深い推論と長文生成が可能です。

3. 回答の長さと深さが違う
「AIモード」の回答は「AIによる概要」の約4倍の長さがあると報告されています。単なる要約ではなく、複数の観点を含む詳細な情報レポートに近い形式で生成されます。

4. ユーザーの検索行動が違う
「AIモード」を使うユーザーは、より長く・複雑で・具体的なクエリを入力する傾向があります。単発の質問ではなく、じっくり検討したい主題を持って「AIモード」を選んでいるユーザーが中心です。


「AIモード」の会話型検索という新しい体験


「AIモード」が提供する会話型検索は、これまでのGoogle検索とは根本的に異なる体験です。

1. 1回で完結しない、複数のやり取り
ユーザーは最初の質問を入力した後、返答を見て追加の質問を投げかけます。「別のパターンは?」「その理由は?」「もう少し具体的に」といった追加質問で、情報を深掘りしていく体験です。従来の検索が「1つのクエリ→複数の検索結果」だったのに対して、「AIモード」は「対話の連続→徐々に情報が深まる」という構造になっています。

2. マルチモーダル入力の受け付け
「AIモード」は、テキストだけでなく画像・動画・音声での質問を受け付けます。マルチモーダル(テキスト・画像・動画・音声など複数の種類の情報を同時に扱えること)対応により、「この画像に写っているものを詳しく教えて」「この動画の内容に関連する情報を集めて」といった多様な形式での質問が可能です。

3. 調査エージェント的な動作
「AIモード」の裏側では、ユーザーの1つの質問に対して、AIが数十から数百の「サブクエリ(元のクエリを細分化した派生クエリ)」を自動生成し、それぞれについて並行して情報を集めます。この仕組みをクエリファンアウト(Query Fan-Out、1つのクエリから多数のサブクエリに展開する仕組み)と呼びます。「AIモード」のクエリファンアウトは、「AIによる概要」より深く広く展開されるため、より網羅的な回答が生成されます。


「AIモード」が急速に普及した背景


「AIモード」は、リリースからわずか1年で月間アクティブユーザー10億人を突破しました。この急速な普及の背景を整理します。

1. ChatGPTなどの生成AI検索への慣れ
多くのユーザーがChatGPTやGeminiといった生成AIとの対話に慣れてきており、「AIとの会話で情報を探す」体験に抵抗がなくなっています。「AIモード」は、そのユーザー体験をGoogle検索の中で提供する形として、自然に受け入れられました。

2. 通常検索での不満の蓄積
「複数のサイトを開いて情報を集めるのが面倒」「広告やSEO最適化されたページばかりで本当に欲しい情報が見つからない」といった、通常検索への不満を持つユーザーが増えていました。「AIモード」は、この不満に応える新しい選択肢として支持されています。

3. モバイル端末での使いやすさ
複数のサイトを行き来する従来の検索は、モバイル端末では特に面倒でした。「AIモード」なら、1つの画面の中で対話が完結するため、モバイルでも使いやすい体験になります。

4. Google側の積極的なプッシュ
Google自身も「AIモード」タブへの導線を検索結果画面上で分かりやすく表示し、ユーザーが選びやすい形にしています。企業として「AIモード」の普及を戦略的に進めている状況です。


「AIモード」で企業が直面する課題


「AIモード」の普及によって、企業のWeb集客には新しい課題が生じています。

1. 「AIモード」利用者の77.6%は外部サイトへ移動しない
複数の調査によると、「AIモード」を使うユーザーの約77.6%は、AIの回答を読むだけで満足し、引用されているサイトを訪れないと報告されています。従来型のSEO対策で「サイト訪問を獲得する」ことを目標としていた企業にとって、この数字は深刻です。

2. 引用対象になる条件が「AIによる概要」と異なる
「AIモード」で引用されやすいコンテンツは、長文で網羅的な深い情報を提供するページです。「AIによる概要」対策で有効だった「短く簡潔で結論先出しの情報」とは正反対の方向で最適化する必要があります。

3. 引用ソースが多様化している
「AIモード」では、通常のWebサイトだけでなく、YouTube動画(全引用の約20%)、Reddit(「AIによる概要」の3.5倍引用される)、LinkedIn記事などが積極的に引用されます。テキスト記事だけの発信戦略では十分ではなくなりつつあります。

4つ目:BtoB企業の情報が優先される傾向
「AIモード」では、BtoB向けの詳細な専門情報が高く評価される傾向があります。BtoC向けの浅い情報は選ばれにくく、深い専門情報を持つ企業が有利になっています。


「AIモード」対策の成功事例


先日、ある楽器店のクライアントさんからこんなご相談をいただきました。「若い顧客層がGoogleの通常検索より『AIモード』で楽器選びの相談をするようになり、自社の情報が全く反映されない」と。

拝見したところ、店舗としては熟練の楽器選定のノウハウを持っていましたが、Webサイトの記事が「〇〇ギター おすすめ5選」といった短い記事中心でした。「AIモード」で引用されやすい「長文で網羅的な情報」という条件を満たしていない状態だったのです。ユーザーは「初心者から中級者への移行時期にどの楽器を選ぶべきか」「予算10万円で本格的な演奏を目指すなら何を優先するか」といった、じっくりした相談を「AIモード」で行っていました。

私は、店主の楽器選定に関する深い知見を、網羅的な長文記事として整備することを提案しました。楽器の種類別・予算別・演奏スタイル別・演奏歴別の選び方を、それぞれ数千字規模の深い解説として整理する形です。同時に、店主が実際に楽器選定の相談に応じている動画をYouTubeで公開し、字幕を丁寧に整えました。

4か月後、楽器選びの相談的なクエリで「AIモード」への引用が発生し、そこからの遠方からの来店客が明確に増加しました。「AIモード」対策では、深く網羅的な情報が武器になることを実感できた事例です。


企業が今から準備すべき対策


「AIモード」時代に向けて、企業が今から準備すべき対策を整理します。

1. 網羅的な長文コンテンツの整備
「AIによる概要」対策で有効だった「短く簡潔なコンテンツ」ではなく、深く網羅的な長文コンテンツを、主要テーマごとに整備します。「ピラーページ」(特定テーマの網羅的な柱コンテンツ)としての設計が有効です。

2. 著者エンティティの強化
「AIモード」では、著者の権威性がより厳しく評価されます。実名・経歴・実績・所属団体・外部プロフィールとの紐付けなど、著者のエンティティ(実在する人物や組織としての情報の集合体)確立を最優先で進めます。

3. マルチモーダル発信の開始
YouTubeでの動画発信、LinkedInでの記事投稿、Redditコミュニティでの継続的な発信など、テキスト記事以外のチャネルでの情報発信を体系化します。「AIモード」の引用ソースは多様化しているため、複数チャネルでの露出が必要です。

4. BtoB向けの深い専門情報の発信
BtoB企業でなくても、「BtoB担当者が読む水準の深い専門情報」を発信することで、「AIモード」からの評価が上がります。一般向けの浅い情報より、専門的で深い情報の方が「AIモード」時代には有利になります。


まとめ


今回の話をまとめると、「AIモード」はGoogle検索の中に用意された会話型検索の専用タブであり、「AIによる概要」とは根本的に異なる仕組み・体験・対策方針を持ち、1年で月間10億ユーザーを突破する急速な普及の中で、企業のWeb集客戦略に大きな影響を与える存在になっている、ということです。

「AIによる概要」との違いを理解した上で、網羅的な長文コンテンツの整備・著者エンティティの強化・マルチモーダル発信の開始・BtoB水準の深い専門情報の発信という4つの準備を今から進めることで、「AIモード」時代への適応が可能になります。「AIモード」を単なる新機能ではなく、Google検索の本質的な変化として捉える発想が、これからの企業戦略の核になります。

AI検索時代になったからSEOが終わるのではありません。むしろ、本当に信頼される専門家や企業が評価される時代が始まったのです。今後のSEOで成果を出すためには、「検索順位を上げること」だけではなく、「AIやユーザーから信頼される存在になること」を目指す必要があります。

失敗して分かったAIを導入しても成果が出ない会社の特徴

2026年07月30日

ChatGPTが話題になり始めた頃、多くの企業から同じ相談を受けました。

「先生、うちでもAIを導入した方がいいですよね。」

2023年頃から、この質問を何十回、何百回と聞いてきました。ところが、その数年後、今度は全く違う相談が増えてきました。

「AIを導入したのですが、思ったほど成果が出ません。」
「社員が最初だけ使って、今は誰も使っていません。」
「AIの利用料だけ払っている状態です。」

私はこの相談を受けるたびに、数年前の自分を思い出します。実は私自身も、AIを導入すれば自然と仕事が効率化すると考えていた時期があったからです。


私はAIさえ導入すれば会社は変わると思っていました


ChatGPTが登場した頃、私はかなり興奮していました。

「これは仕事のやり方を根本から変える。」
「どの会社でも生産性が大きく上がる。」

そんな期待を持っていました。

実際、私自身も毎日のようにAIを使い始めました。

・ブログ記事を書く。
・セミナー資料を作る。
・企画を考える。
・メールを書く。

次々とAIを仕事へ取り入れていきました。そして私は、「クライアントさんの会社でも同じことが起きる」と思っていました。

しかし現実は違いました。AIを導入して成果が出る会社と、ほとんど変わらない会社にきれいに分かれたのです。最初は理由が分かりませんでした。

・同じChatGPTを使っています。
・同じような研修も受けています。
・それなのに結果は全く違う。

私はこの違いがずっと気になっていました。


ある会社で気付いた「誰も悪くない失敗」


ある会社では、全社員へChatGPTのアカウントを配布していました。社長も、「どんどん使ってください。」と言っています。研修も実施しました。使い方も説明しました。これならAI活用は成功すると思っていました。



数か月後に訪問すると、ほとんど誰も使っていませんでした。理由を聞くと、「何に使えばいいか分からないんです。」という答えが返ってきました。

私はここで、自分の大きな勘違いに気付きました。私は「AIの使い方」を教えていました。しかし、「仕事の変え方」は教えていなかったのです。この違いは非常に大きいものでした。


包丁を配っただけでは料理は増えません


私はその出来事以来、AIを包丁に例えて説明するようになりました。包丁を買えば料理が上手になるでしょうか。もちろん、そんなことはありません。包丁は道具です。誰が使うか。何を作るか。どんな料理を目指すのか。それが決まって初めて価値が生まれます。

AIも全く同じです。ChatGPTを導入しただけで成果が出る会社はありません。AIをどの業務に使うのか。誰が最終判断するのか。浮いた時間を何に使うのか。そこまで設計して初めて成果につながります。

私は以前、この設計を十分考えないまま、「まずAIを使いましょう」と勧めていました。今思えば、それは反省すべき点でした。AIを導入することと、AIを活用することは全く別の話だったのです。


成果が出る会社は、AIではなく「仕事」を見直していました


多くの企業を見てきて、今では一つ確信していることがあります。成果が出る会社は、「AIを導入しよう。」とは考えていません。「仕事をどう変えよう。」と考えています。AIは、そのための手段でしかありません。

この考え方の違いが、数か月後、数年後には非常に大きな差になって現れます。私自身も、AIを見る時間より、お客様の仕事を見る時間の方がずっと重要だと考えるようになりました。それが、「AIを知ること」と「AIで成果を出すこと」の違いだったのです。


AI活用が定着する会社には共通点がありました


では、実際にAI活用が定着している会社には、どのような共通点があるのでしょうか。私は数多くの企業を支援する中で、一つの傾向に気付きました。成果を出している会社は、「AIを使うこと」を目的にしていません。

「社員がもっとお客様と向き合う時間を増やそう。」
「企画を考える時間を増やそう。」
「単純作業を減らそう。」

まず、この目的が明確なのです。その上で、「そのためにAIをどこへ使おうか」と考えています。

一方で、成果が出ない会社は逆です。「AIを導入しよう。」から始まります。その結果、「では何に使おうか。」という順番になってしまいます。この順番の違いは小さなことのように思えますが、実際には非常に大きな違いになります。


AIは優秀な新人社員によく似ています


最近、私はAIを説明するときに、「優秀な新人社員」という例え話をすることが増えました。

もし今日、非常に優秀な新人社員が入社したとします。その新人は、文章を書くのも速い。調査も得意。資料も短時間で作れる。そんな優秀な人材です。しかし、社長がその新人に、「とりあえず自由に仕事をしてください。」と言ったらどうなるでしょうか。

おそらく新人は困ってしまいます。何を優先すればいいのか。誰に相談すればいいのか。どこまで自分で判断していいのか。分からないからです。AIもまったく同じです。AIは非常に優秀です。しかし、目的や役割を与えなければ、本当の力を発揮できません。

私は以前、「AIは何でもできる」と考えていました。しかし今では、「AIは役割を明確にすると驚くほど力を発揮する」と考えています。




私が企業へ最初に質問することが変わりました


AI導入コンサルティングを始めた頃、私は企業へこんな質問をしていました。

「どんなAIを使いたいですか。」
「ChatGPTは導入されていますか。」
「画像生成AIにも興味がありますか。」

ところが今では、最初に聞くことは全く違います。

「社員の皆さんは、一日の仕事で何に一番時間を使っていますか。」
「その中で、一番面倒だと感じている作業は何ですか。」
「本当はもっと時間を使いたい仕事は何ですか。」

この質問をすると、企業の課題が見えてきます。

その課題が分かって初めて、「それならAIでこの部分を改善できます。」という提案ができます。つまり、AIから考えるのではなく、仕事から考えるようになったのです。これは私自身の大きな変化でした。


成果が出る会社は、小さく始めていました


もう一つ興味深いことがあります。成果が出ている会社ほど、最初から大規模なAI導入をしていません。例えば、議事録だけAIに任せる。メールの下書きだけAIに任せる。ブログ記事の構成だけAIに考えてもらう。こうした小さな成功体験を積み重ねています。

すると社員も、「これは便利だ。」「次はこの仕事にも使えそうだ。」と自然に活用範囲が広がっていきます。反対に、「今日から全部AIでやりましょう」という会社ほど、うまくいかないことが多いのです。



これはダイエットにも似ています。いきなり毎日10キロ走ろうとしても、多くの人は続きません。しかし、毎日15分歩くことから始めれば、少しずつ習慣になります。AI活用も同じです。続けられる小さな改善の積み重ねが、大きな成果につながります。


私がAI時代に考え方を変えた理由


今振り返ると、私はAIそのものばかり見ていました。

「新しいAIは何だろう。」
「どんな機能が追加されたのだろう。」

そんなことばかり考えていたのです。

しかし、企業を支援し続ける中で、私の視点は変わりました。見るべきなのはAIではありません。仕事です。働く人です。そして、その先にいるお客様です。

AIはその間をつなぐ道具に過ぎません。道具が主役になることはありません。主役は、いつも人です。だから私は今でもAIを学び続けています。しかし、それは新しい機能を自慢するためではありません。目の前のお客様が、より良い仕事をするためです。


まとめ


私は以前、「AIを導入すれば会社は変わる」と考えていました。しかし、それは間違いでした。本当に会社を変えるのはAIではありません。AIを使って仕事の進め方を変えようとする人たちです。

これまで数多くの企業を支援してきましたが、成果が出る会社には共通点があります。AIを目的にしていないことです。お客様への価値を高めること。社員がもっと創造的な仕事をできるようにすること。その目的があるからこそ、AIは力を発揮します。

もしこれからAIを導入しようと考えているのであれば、ぜひ最初に考えてみてください。「AIを導入すること」が目的になっていないでしょうか。本当に考えるべきなのは、「AIを使って、どんな会社になりたいのか」です。その答えが明確になった会社は、AIを一時的な流行ではなく、未来を切り開く強力なパートナーとして活用できるようになると、私は確信しています。

失敗して分かったAIに仕事を奪われる人の本当の特徴

2026年07月29日

「先生、この仕事はAIに奪われますか。」ここ一年ほどで、私が一番多く受けた質問かもしれません。講演会でも。企業研修でも。コンサルティングでも。年齢や職業に関係なく、本当に多くの方が同じ不安を口にされます。

「事務職はなくなるのでしょうか。」
「ライターはもう必要なくなるのでしょうか。」
「Web担当者もAIに置き換わりますか。」

その質問を聞くたびに、私は数年前の自分を思い出します。

実は私も、AIが急速に進化し始めた頃、「どの仕事がなくなるのだろう」と考えていました。新聞記事を読み、海外ニュースを調べ、AI研究者の話を聞きながら、「この仕事は危ない」「次はこの職業かもしれない」と考えていたのです。しかし、企業支援を続ける中で、その考え方は大きく変わりました。仕事がなくなるのではありませんでした。変わったのは、仕事のやり方だったのです。


私は「職業」がなくなると思っていた


ChatGPTが登場した当初、私はある意味で世間と同じ考え方をしていました。

・ライター
・デザイナー
・プログラマー
・翻訳者

次はどの仕事がAIに置き換わるのだろう。そんな記事を読むたびに、「確かにそうかもしれない」と思っていました。

ところが実際に企業を訪問してみると、現実は全く違っていました。ライターはいなくなっていません。デザイナーもいます。プログラマーもいます。むしろ以前より忙しくなっている会社も少なくありませんでした。

私は不思議でした。ニュースでは「AIが仕事を奪う」と言われています。しかし現場では、そのようなことは起きていません。一体何が違うのでしょうか。


あるライターさんとの会話で考え方が変わりました


ある日、長年記事を書いているライターの方とお話しする機会がありました。私は率直に聞きました。「AIが出てきて、不安はありませんでしたか。」すると、その方は笑いながらこう答えました。「もちろん最初は不安でした。でも、今は前より忙しいですよ。」理由を聞くと、とても興味深い答えが返ってきました。

「記事を書く時間は半分になりました。でも、その分、お客様への取材や企画に時間を使えるようになったんです。」その瞬間、私はあることに気付きました。AIが奪ったのは、記事を書く仕事ではありません。記事を書く時間だったのです。これは非常に大きな違いでした。


仕事はなくならない。でも仕事の中身は変わる


私は最近、仕事を「一つの塊」として考えないようになりました。例えばSEOコンサルティングという仕事も、一つではありません。情報収集。分析。資料作成。企画。お客様との打ち合わせ。改善提案。検証。

こうして細かく分けると、AIが得意な仕事もあれば、人間でなければ難しい仕事もあります。つまり、AIは仕事そのものを奪うというより、その仕事の中にある一部の作業を引き受けるようになっているのです。

私はこのことに気付くまで、「仕事」という大きな単位で考えていました。しかし現実には、「仕事の中身」が変わっていたのです。


AIに置き換えられる人には、一つの共通点があった


ここまで読むと、「では、AIに仕事を奪われる人はいないのでしょうか」と思われるかもしれません。実は、私は「AIに仕事を奪われる人はいる」と考えています。ただし、その理由は職業ではありません。

数多くの企業を支援する中で感じているのは、AIに置き換えられやすいのは、「作業しかしていない人」だということです。少し厳しい言い方になりますが、これは能力の問題ではありません。仕事への向き合い方の問題なのです。

例えば、毎日同じフォーマットに沿って資料を作るだけ。指示された文章を書くだけ。決められた情報を整理するだけ。こうした仕事は、AIが非常に得意な分野です。

一方で、

「この資料なら社長は理解しやすいだろう。」
「このお客様には、この順番で説明した方が伝わる。」
「今回は、この企画ではなく別の提案をした方がいい。」

こうした判断は、今でも人間が行っています。つまり、AIが苦手なのは「考えること」ではなく、「相手や状況に応じて判断すること」なのです。


私はAIを使うほど、人と話す時間が増えた


これも私自身が予想していなかったことでした。AIを使えば使うほど、パソコンに向かう時間が増えると思っていたのです。しかし現実は逆でした。文章を書く時間は短くなりました。資料を作る時間も短くなりました。調査も以前より速く終わります。その結果、何が増えたと思いますか。

お客様と話す時間です。企業の担当者と雑談する時間。社員の方の悩みを聞く時間。セミナー終了後に質問へ答える時間。つまり、人と向き合う時間が増えたのです。これは私にとって大きな発見でした。AIは人間とのコミュニケーションを減らすものではなく、むしろ増やしてくれる道具だったのです。


AI時代は「答えを知っている人」より「質問できる人」が強い


私が最近、特に重要だと感じている能力があります。それは、「良い質問をする力」です。以前は、知識をたくさん持っている人が評価されました。しかし今は、知識はAIがすぐに教えてくれます。

では、何が差になるのでしょうか。それは、「何を聞くべきか」を考える力です。私はコンサルティングでも、いきなり答えを出すことはほとんどありません。まず質問をします。

「本当に困っていることは何でしょうか。」
「その仕事は、なぜ今のやり方なのでしょうか。」
「もし時間が2倍あったら、何をしたいですか。」

こうした質問を重ねることで、本当の課題が見えてきます。

AIに質問するときも同じです。曖昧な質問をすれば、曖昧な答えしか返ってきません。良い質問をすれば、AIは驚くほど質の高い答えを返してくれます。つまり、AI時代は「答えを持っている人」よりも、「本質的な質問ができる人」の価値が高まっているのです。


仕事を奪われるかどうかは、自分で決められる時代になった


以前の私は、「AIによってどの職業がなくなるのだろう」と考えていました。しかし今は、その考え方自体が変わりました。本当に重要なのは職業ではありません。今の仕事を、昨日と同じやり方で続けるのか。それともAIを取り入れて、自分の役割を進化させるのか。その選択の方が、はるかに重要です。

例えば、ライターという職業は今も存在しています。しかし、「文章を書くだけのライター」と、「読者の悩みを深く理解し、企画まで考えられるライター」とでは、求められる価値は大きく違います。営業も同じです。資料を説明するだけの営業と、お客様の課題を一緒に整理できる営業では、AI時代の価値は全く異なります。つまり、AIが変えているのは肩書きではなく、「その仕事で何を提供しているか」なのです。


まとめ


私自身、AIが登場した当初は、「どの職業が生き残るのか」という視点で物事を見ていました。しかし、それは大きな勘違いでした。

企業を支援し、多くの現場を見る中で分かったのは、AIは仕事そのものを奪うのではなく、仕事の中にある作業を引き受ける存在だということです。だからこそ、人間に残される仕事は、これまで以上に価値を持つようになります。

考えること。
判断すること。
相手の気持ちを理解すること。
責任を持って決断すること。
そして、人と信頼関係を築くこと。

これらはAIには代わることができません。

もし今、「自分の仕事はAIに奪われるのではないか」と不安を感じているのであれば、一度だけ視点を変えてみてください。「私の職業はなくなるだろうか」と考えるのではなく、「私はAIにはできない、どんな価値を提供できるだろうか。」

そう考え始めた瞬間から、AIは脅威ではなく、あなたの力を何倍にも広げてくれる最高のパートナーになります。それが、私自身が数年間AIと向き合い、多くの企業の現場で試行錯誤を重ねる中でたどり着いた結論です。

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