課題
今回ご紹介するのは、東京都内で新築住宅やリフォーム工事を手掛けている工務店様の事例です。
この工務店様は以前からSEOにも力を入れており、施工事例や住宅に関する情報をWebサイトで積極的に発信していました。その結果、検索エンジンから一定のアクセスを獲得し、問い合わせも発生していました。
しかし、経営者の方には一つ大きな不安がありました。それは、「検索エンジンからの集客だけに頼るのは将来的に不安がある」ということでした。住宅やリフォームは、その場ですぐに購入を決める商品ではありません。多くの方は、
・いつか家を建てたい
・将来リフォームをしたい
・中古住宅を購入してリノベーションしたい
・建て替えを検討している
といった段階から情報収集を始めます。
ところがSEOで集客できるのは、基本的に検索をしている人だけです。つまり、
・まだ工務店を探していない人
・住宅に興味を持ち始めたばかりの人
・将来的にリフォームを考えている人
とは接点を持ちにくいという課題がありました。私はここに大きな機会損失があると感じました。
また、工務店業界は比較検討が非常に激しい業界です。多くのお客様は複数社から見積もりを取り、価格や提案内容を比較します。そのため、本当に重要なのは検索された後ではありません。比較される前の段階で、「この会社に相談したい」と思ってもらうことです。
そこでYouTubeチャンネルを立ち上げて情報発信を始めていましたが、思うような成果は出ていませんでした。動画の内容自体は決して悪くありませんでした。施工事例も紹介していましたし、住宅に関する知識も豊富でした。
しかし、
・再生回数が伸びない
・チャンネル登録者が増えない
・問い合わせにつながらない
という状況が続いていました。実際に分析してみると、その理由は明確でした。当時の動画は長尺動画が中心で、
・内容が専門的すぎる
・最後まで見てもらいにくい
・新規ユーザーに届きにくい
という課題があったのです。
また、
・Webサイトへの誘導
・問い合わせ導線
・他動画への回遊
も十分に設計されていませんでした。つまり当時は、
・動画を作っている
・内容も悪くない
・しかし広がらない
・問い合わせにつながらない
という状態だったのです。
実施内容
今回のプロジェクトで最初に行ったのは、「認知 → 信頼 → 問い合わせ」という流れを作り直すことでした。
私は以前から、「YouTubeは広告ではなく信頼を作るメディア」だと考えています。特に住宅業界はその傾向が強く、最終的に選ばれる理由は価格ではなく信頼だからです。
そこでまず取り組んだのが動画テーマの見直しでした。住宅業界で視聴者の反応を分析すると、特に人気が高いのは、
・ビフォーアフター
・ルームツアー
・失敗事例
・プロによる解説
でした。
そこで動画の方向性を整理し、
・施工事例のビフォーアフター
・完成住宅のルームツアー
・リフォーム失敗事例
・家づくりで後悔しないための知識
・住宅のプロによる解説
を中心に発信するようにしました。
特に意識したのは、完成後だけを見せないことでした。多くの工務店は綺麗になった状態ばかりを見せます。しかし視聴者が本当に見たいのは変化です。例えば、
・築40年の住宅
・古いキッチン
・暗いリビング
・使いにくい間取り
がどのように変わったのかに強い興味を持っています。
そこで、
・工事前
・工事中
・完成後
の流れが分かるコンテンツを増やしました。
次に取り組んだのがショート動画戦略です。ここが大きな転機になりました。私は長尺動画だけでは新しい視聴者に届きにくいと考えていました。そこで既存の長尺動画から、
・驚きの変化
・印象的なシーン
・役立つワンポイント
・思わず最後まで見たくなる場面
を切り出し、1分以内のショート動画として再編集しました。
そして、
・YouTubeショート
・Instagramリール
・TikTok
へ同時展開しました。この施策によって、それまで接点がなかったユーザーにも動画が届くようになりました。
さらにサムネイルも全面的に見直しました。以前は施工写真をそのまま掲載していましたが、
・築60年の家が大変身
・知らないと損するリフォーム知識
・リフォームで失敗する人の共通点
・ここまで変わるの?
といった興味を引く切り口へ変更しました。
また、チャンネルの見せ方も変えました。企業名を前面に出すのではなく、社長や担当者の人柄が伝わる発信へ切り替えたのです。住宅業界では、「どこの会社か」よりも「誰が担当してくれるのか」の方が重要になることが少なくありません。そのため動画でも人を前面に出し、「この人なら相談したい」と思ってもらえる発信を意識しました。
さらに、
・動画をWebサイトへ埋め込む
・ブログ記事を動画化する
・動画からサイトへ誘導する
・SNSで動画を再活用する
といった導線整備も行いました。これによって、
YouTube
↓
Webサイト
↓
問い合わせ
という流れを構築することができました。
成果
こうした改善を継続した結果、YouTubeチャンネルは大きく成長しました。最初に成果が現れたのはショート動画でした。それまで伸び悩んでいたチャンネル登録者数が徐々に増加し始めたのです。ショート動画はアルゴリズム上、登録者以外にも表示されやすいため、新しい視聴者との接点を作る入口として非常に効果的でした。
さらに興味深かったのは、ショート動画だけで終わらなかったことです。ショート動画を見た人が長尺動画を視聴し、そこで会社や担当者の考え方を知るようになりました。その結果、長尺動画の再生数も大きく伸びていきました。中には19万回以上再生される動画も生まれました。
これは偶然ではありません。ショート動画で認知を広げ、長尺動画で信頼を作るという戦略が機能した結果でした。また、問い合わせの質にも大きな変化が現れました。以前は価格比較を目的とした問い合わせが多かったのですが、
・動画を見て相談したいと思った
・この会社なら安心できそう
・この担当者にお願いしたい
という問い合わせが増えていったのです。つまり価格ではなく信頼で選ばれる状態へ変わっていきました。
さらに動画を見たユーザーがWebサイトへ訪問するようになったことで、サイト全体のアクセス数も増加しました。SEOとYouTubeが連携し始めたのです。また、動画によって会社の考え方や施工品質が伝わるようになったため、商談の段階での理解度も高まりました。
その結果、
・チャンネル登録者数の増加
・動画再生回数の増加
・サイトアクセス数の増加
・問い合わせ数の増加
・問い合わせの質の向上
・成約率の向上
という成果につながりました。
最終的には、
ショート動画
↓
長尺動画
↓
Webサイト
↓
問い合わせ
という安定した集客導線が完成したのです。
まとめ
今回の事例で改めて感じたのは、SNS集客の本質はバズではないということです。多くの企業は再生回数ばかりを追いかけます。しかし本当に重要なのは、
・認知されること
・信頼されること
・問い合わせにつながること
です。
今回の成功要因は、
・ビフォーアフターを活用したこと
・ショート動画を導入したこと
・人を前面に出したこと
・Webサイトと連携したこと
・認知と信頼の役割を分けたこと
にありました。
私はこれまで多くの企業のYouTube活用を支援してきましたが、成果を出している会社には共通点があります。それは動画を広告として使うのではなく、「信頼を作るメディア」として活用していることです。
今回の工務店様も、施工事例や住宅に関する知識を発信し続けることで、多くの見込み客との信頼関係を築くことができました。これからの時代は、検索で見つけてもらうだけでは不十分です。検索で見つかり、動画で信頼され、問い合わせにつながる。今回の工務店様の取り組みは、その流れを実現した非常に良い成功事例だったと思います。
